【雑記】優しい笑顔 その3
皆様お疲れ様です。
今回も続きを書いていこうと思います。
前回の話はコチラから
【あらすじ】
化学療法班を周る新人の僕が担当になった大腸がんの患者さん。
なんと32歳という若さであった。その若さに驚きながら、カルテを確認した僕はある異変に気付き詰所を後にした…
僕「はぁ…はぁ…」
N病棟から少し離れた医局まで小走りで移動しただけで息が切れる。
(そういえば最近運動してないな…落ち着いたら何かしてみようか…)
そんな事を考えている間に医局に辿り着いた。
医局と言っても自分の所属する消化器内科ではない。
放射線科の医局である。
【放射線科】
放射線科はその名の通り放射線(X線)を使った処置(カテーテル処置など)を行う科です。
また同時にX線、CT、MRIなどの画像検査の最終診断を下す画像検査のプロフェッショナルです。アメリカではdoctor of doctor、つまり医者の(ための)医者と呼ばれています。
研修医時代に放射線科を選択して周っていて良かった…
おかげで気軽に放射線科の医局に行ける。
放射線科医局についた僕へすぐに声がかかる。
??「おぅ先生。久しぶりやな。どうかしたんか?」
僕「あ!H先生。ご無沙汰してます。今日もちょっとお聞きしたい症例が…」
運が良い。
研修医の時につきっきりで教えてくれた先生である。いつだって力になってくれる頼もしい先生だ。
僕「大腸癌ターミナル(末期という意味です)の方がイレウス起こしたんですけど、ちょっと画像がわからなくて…」
H「そうなん?お前ちゃんと画像読んでるか?サボってるんちゃうん?」
少し罪悪感を感じながら、苦笑いでごまかす。
そんな表情を察しているのかいないのか…すでに読影(診断の事です)の準備をしてくれている。
H「IDは?」
僕「0123400です。」
H「…おー、がっつりイレウスなってるね。何が問題なん?」
僕「んっと、大腸癌ターミナルなんで閉塞性やと思ってたんですけど、なんか詰まってる印象がなくて…」
※腸閉塞
前回閉塞性と麻痺性について話しましたが、今回大腸癌ですので当時の僕はもちろん大腸癌が大きくなってしまい腸が詰まった(閉塞性)と思ってました。
H「そうやね。先生これは閉塞性じゃなくて麻痺性やで。」
僕「…」
H「前にも説明した気がするけどなぁ…腹腔内みてみ?リンパ節が腫れてるやろ?これが癌性腹膜炎ってやつやわ。そのせいで動いてないんちゃうかな。」
僕「…そうです…よね。」
うすうす予感はしていた。というよりH先生の教え方は上手い。忘れるわけがない。
前回の時も同じような感じで教えてくれたことは鮮明に覚えている。
H「この患者さん何歳なんや?…えっ32!?…きついなぁ。」
僕「ですよね…」
【癌性腹膜炎】
癌性腹膜炎は癌細胞がお腹の中に散らばってしまい、炎症を起こした状態です。
膵臓や卵巣等の上皮に覆われていない、いわゆる剥き出しの臓器の癌に多いですが、その他の癌であっても進行すれば起こって来ることがあります。
僕「ありがとうございました。」
(…やっぱり閉塞性じゃないよな。)
気を落としながらN病棟へと戻っていく足取りは重かった…
長くなってきましたので一旦ここで中断します。
次回気が重くなった理由が明かされていきます。
最後まで読んで頂いてありがとうございました!