【雑記】優しい笑顔 その4
皆様お疲れ様です。
今回も続きを書いていこうと思います。
前回の話はコチラから
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【あらすじ】
化学療法班を周る新人の僕は32歳という若い大腸癌患者さんの担当になった。画像検査に違和感を感じ放射線科へ向かう。そこで聞いた結果に落胆するのであった。
放射線科の医局を後にした僕はN病棟に向かった。
病棟へ向かうエレベーターの中で先ほどの結果を噛み締める。
今回の腸閉塞は閉塞性ではなかった…癌性腹膜炎による麻痺性イレウスだった…
これは正直Aさんに何と説明したらいいのかわからない。
戸惑いながらN病棟に到着する。
すると先ほど無視してしまった看護師さんから話しかけられる。
看「先生、どこ行ってたんですか?」
僕「すいません!ちょっと放射線科にCT診てもらいに行ってました。」
看「びっくりしました。…で、何かあったんですか?」
僕「うん、今回の腸閉塞、癌性腹膜炎からの麻痺性みたいです。」
看「?麻痺性ですか?」
いくら消化器病棟とはいえ流石にここまで込み入った病態には説明が必要だ。
(幸い他の患者さんは落ち着いている、看護師さんに説明しながら頭の中を整理していこうかな(…というか、Aさんに説明する前の練習台になってもらおうかな。))
僕「んっと、腸閉塞の原因としてまずは大腸癌が大きくなって内腔が狭くなったことで引き起こされたもんだと思ってたんですけど、残念ながらそうじゃなかったんです。」
看「違ったんですね。なんで残念なんですか?」
僕「内腔が狭くなっただけなら、そこに金属ステントって金属の筒を入れて押し広げることで詰まってるのは改善するし、そうなればご飯も食べれます。それにそれだけなら手術も検討出来るし、色々な選択肢があるんやけど…今回はそうはいかないんです。」
看「麻痺性はダメなんですか?」
僕「麻痺性がだめというより、今回は癌性腹膜炎が起きてしまっていて、それによる麻痺性というのが駄目なんです。」
看「?」
僕「癌性腹膜炎はお腹の中に癌細胞が散らばって広範囲に炎症を起こしている状態なんです。そのせいで腸管が動かなくなって、腸閉塞をきたしているのが現在の状態です。そして腸閉塞の状態を元に戻すには原因を取り除く必要があるんですが…」
看「あっ!」
僕「そうなんです。原因を取り除くって事は、つまり癌細胞を取り除く必要があるんです。それができないから、化学療法を行っているので…もちろん不可能です。」
看「…じゃあ、今回はどうするんですか?違う抗癌剤使ったりするんですか?」
僕「…今使ってる抗癌剤が、最後の種類なんです。」
看「…」
僕「もうこの状態が良くなることはないです。かろうじて癌性腹膜炎以外の炎症の要素が少しあるかもしれない事を願って抗生剤を試してみたり、後は腸を動かす薬をガンガン使って腸が動いてくれる事を祈るだけですが…正直厳しいと思います。」
看「…そうなんですね。」
少し重苦しい雰囲気になる。予想通りではある。
しかしこれを本人にどう話せばよいのやら…
思い悩めば答えが出てくるわけではない。
事実を伝えるしかないのだから今と同じように言えばよい。
そんなことは分かっていたが、駆け出しの僕にはその踏ん切りがつかない。
そんな中、詰所の前のエレベーターが開く。
そこから出てきたのは…Aさんだった。
A「先生~!今レントゲン撮ってきましたよ。」
僕「お疲れさまでした!もう画像取り込んでると思うので、今診てすぐに伺いますね~。」
A「わかりました。部屋で待ってますね。お急ぎにならなくても大丈夫ですよ。」
Aさんはとても病院慣れしている。何年も通っているから当たり前か。
落ち着いたその声とこの気遣い。
きっと職場でもいい人なのだろうなと思いながら、X線画像を確認する。
イレウス管のおかげで腸閉塞は早くもだいぶ良くなっている。
僕「さて…」
僕はAさんの病室に向かった…
長くなりましたので一旦中断させていただきます。
最後まで読んでいただいて有難うございました!