【雑記】優しい笑顔 その6
皆様お疲れ様です。
前回の続きを書いていこうと思います。
前回はコチラから。
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【あらすじ】
化学療法班を周る新人の僕は32歳という若い大腸癌患者Aさんの担当になった。
もう治らない状態である事をAさんに告知しようとするが、出来なかった僕は上司のもとへ急いぐのだった。
外来まで足早に向かう。
上司の外来ブースにたどり着いたら幸い最後の患者さんへの説明中だった。
上「...というわけで、化学療法続けていきましょう。お疲れ様でした。」
説明が終わる。カルテを書き始めた上司をブースの裏から顔を少し出し覗きこむ。
(傍から見たら怪しい人に見えるかな...)
そんな些細な不安を抱えながらタイミングを見計らう。
と、不意に上司がこちらを振り向く。
上「(笑) いやいや、何してるん?」
...どうやら身を乗り出しすぎていたようだ。
上「めちゃ怪しい人みたいやで(笑)」
(...やっぱりそう見えたか)
早めに声をかければよかったと少し後悔しながら、話し始める。
僕「外来お疲れ様です。あの、Aさんの担当になって画像見たんですけど...」
上「おぉ、先生が担当になったんや。よろしくね。で、何かあったの?」
僕「それが、癌性腹膜炎からの麻痺性イレウスなってて...これってイレウス管抜けないですよね?あと...予後(寿命)どれくらいとか先生分かったりしますか?」
上「この患者さんなぁ....かわいそうやけど、この入院が最後やわ。予後は2週間位ちゃうかなぁ...」
僕「!...2週間ですか。」
この頃の僕はまだ経験が浅く、いつかは亡くなるのだろうなとはわかっていても、
それがどのくらいなのかについては全く見当もついていなかった。
(そんなに早いのか...)
もちろん、あくまで見立てであるから外れることもあるだろう。
しかし、この道で何十年とやってきている先生の言葉だ。
きっとそんなには外れないのだろう。
上「イレウス管はもう少し見たら抜いてあげよっか。あれ痛いし、しんどいやろうからね。」
僕「え?抜けるんですか?でもそしたらまた腸閉塞になってしまうんじゃ…」
上「サンドスタチン使ったら意外と大丈夫だよ。まぁもちろんそれでも閉塞してしまう事あるけど。その時はもう仕方がないかな。」
【サンドスタチン】
サンドスタチンは消化管ホルモンや成長ホルモンの分泌を抑制する薬剤です。
ですので本来はホルモンを過剰に分泌する腫瘍(ホルモン産生腫瘍)に適応となりますが、
消化管閉塞に伴う消化器症状を緩和してくれる作用もあります。
僕「そんな薬があるんですね。容量調べて使うよう指示出しときます。」
上「うん、患者さんには重々に説明しないかんよ。」
僕「はい。了解しました。有難うござました。」
「仕方がない」…もちろんわかってはいるが、やはりもどかしさが込み上げる。
イレウス管を抜いて、次に詰まるときは恐らくもう...
僕(...いかん、ちょっと寄り道しよう。)
ネガティブに考えがちな僕はどんどん悪い方向に考えが行ってしまう。
僕がネガティブになったところで結果は変わらない。
そんなことは分かっていても中々生まれ持っての性格は変わらない。
そんな時はいつも医局の横にある小部屋に行く。
そこはパソコンが何台か置いてあり、本来は新規入職者に電子カルテを教える場所なのだが、普段は大体空き部屋になっている。
それに目を付けた僕と同僚Sがいつも何か調べものする時や休憩する時にこっそり忍び込んでいた。
またお互いが悩んだ時もそこでよく相談していた。
僕 (Sいるかな…)
期待しながら小部屋のドアを開ける。
S「おーお疲れさん~」
椅子を並べて足を延ばしながらパソコンをいじくっている。
いつもの姿で彼は休憩していた。
僕「おーお疲れ~」
気持ちが和らぐ。やはり同僚というのは本当に大事な存在だ。
Aさんと話す前にSの考えも聞いておこうかな...
そう思った僕は、彼の横のデスクに椅子を並べ似たような格好で話し始めた...
長くなりましたのでここらへんでいったん終了させて頂きます。
前回同様書き始めたら色々と思い出して早くも6話になってしまいました(笑)
もう少し続きます。お暇な時にでも見た頂けたら嬉しいです。
最後まで読んで頂きありがとうございました!