【雑記】優しい笑顔 その8
皆様お疲れ様です。
前回の続きを書いていこうと思います。
前回の話はコチラから
【あらすじ】
化学療法班を周る新人の僕は32歳という若い大腸癌患者Aさんの担当になった。
もう治らない状態である事をAさんに伝えることのできなかった僕は同僚Sと話すことで自信を取り戻す。
そして再び病棟へ向かうのだった。
N病棟へとたどり着いた僕はもう一度カルテを書きに詰所に立ち寄る。
看「先生、○○先生(上司)とは話されたんですか?」
僕「うん、話してきたよ。それよりAさんってどんな感じの人か知ってる?」
看「...? どんな感じってどういうことですか?」
僕「えっと,,,告知の時に本人に話すのか、家族に話すのかとか...ね?」
看「あぁ。本人さんがしっかりされているので全部本人に話されていたみたいですよ。」
【告知について】
昔の癌告知は慎重にまずは家族から話して本人に告知するタイミングを決める事が多かったらしいのですが、最近は基本的に本人に告知する事になっています。(残りの予後に対して人生のプランを立てて頂くため)
...と、僕は習ったのですが実際臨床でそのまま行うとトラブルになることも多々あります。(「何で本人に言ったのか?」「そんなことは希望していない!」等)
...かと思えば、家族に先に話すとそれはそれで「何で自分(本人)に話さないのか?」とトラブルになることもあり、誰にどのタイミングで告知するかというのはかなり悩ましい部分です。
なので患者さん本人がどれだけ許容できるか、家族はどのように考えておられるのか等の情報を得る必要があるのですが、今回の場合は前回の告知内容などを詳しく知る事が出来たのでスムーズでした。
(本人が許容されておられるのか…)
(確かにあの雰囲気なら納得だ。...よし。)
僕「そしたら本人に今からある程度話します。」
看「週末でなくていいんですか?」
僕「うん、週末まで少し時間空くし、そうなればAさんも不安やろし...どうせ話すなら今僕が分かってることは話しておいた方がAさんも納得できるんじゃないかと...」
看「分かりました、ではIC室(病状説明行う部屋)にご案内しますね!」
僕「お願いします。」
…本当にそうだろうか?
Aさんが納得できる?自分がさらけ出すことで重圧から逃れたいだけじゃないか?
誠心誠意ぶつかるなんて綺麗事を自分に言い聞かせて、ただ逃げたいだけじゃないのか?
そんないつものネガティブな考えが胸の奥から渦巻いてくる。
【出来ることを出来る限りやる】
この言葉がすぐにそんなネガティブをどこかへ消し去る。
前向きに出した答えならならそれは間違いじゃない。
説明しないでいたらきっと上司が見かねて説明してくれるだろう。
今頑張って話さなくても、その内話す時が来るんだしそれでいいだろう。
もしかしたら予想よりももっと長生き出来て、厳しい話なんかする前に僕は次の班に移れるんじゃないか?
そんな次々生まれてくる逃げの誘惑を振り切る。
看「...生、先生。Aさん来られました。」
気付けば詰所から見える小部屋からAさんがこちらを見ている。
僕は笑顔で応えながらその部屋へと足を進めた...
長くなりましたので一旦終了します。
僕自身の葛藤ばかりで長くなってしまいました💦
次回からAさんとの対話(病状説明)が始まります。
最後まで読んで頂きありがとうございました!