消化器内科医のひまつぶし

医療関係を中心に?日々起こった事、思った事書いていこうかと思います。

【ちょっと情報】腸管の癒着とは

皆様お疲れ様です。

久しぶりに医療情報を紹介していきたいと思います。

 

今までも何度か話に出たことがありますが、よく患者さんから質問される腸管の癒着について説明させて頂きます。

 

【癒着とは】

【癒着の原因】

【癒着の起こる時期】

【癒着の治療法】

【癒着の対処法】

 

【癒着とは】

癒着というのは炎症が起こることによって組織と組織がくっついてしまうことです。

お腹の中には様々な臓器がありますが、一番動いている臓器は腸管(小腸、大腸)です。

この腸管の組織が、お腹の中の組織とくっつくことで動きが悪くなってしまうと、食物の運搬機能が落ちてしまい、腸閉塞(イレウス)を引き起こすリスクとなってきます。

 

【癒着の原因】

癒着が起こる原因としては、

①手術 ②腹腔内の強い炎症 ③その他 があります。

①手術

一番多いのは手術です。手術によって傷ついた組織がお腹の中で修復される際に腸管の外壁の組織とくっついてしまい、腸管の動きが弱まってしまいます。

特に子宮や卵巣、膀胱などの下腹部の手術後はS状結腸という大腸の癒着が起きやすく(その他でも起きる事はあります)後々問題になることが多いです。

 

②腹腔内の強い炎症

炎症が起きると手術と同様に癒着が起きます。

腹腔内の強い炎症の例としましては、

胆嚢炎、急性膵炎、卵巣炎、虫垂炎、結腸憩室炎などがあります。

また急性腸炎や腎盂腎炎などもかなり強い炎症になれば癒着が起こることもあります。

 

③その他

他には癌が腹腔内に転移してしまう腹膜播種などでも起こってきます。

 

【癒着の起こる時期】

ここがよく聞かれるのですが、癒着はすぐには起こりにくいです。

10年20年前の手術が原因で癒着が起こったりなんて話も多々あります。

なので上記の起こるリスクのある方は今後注意は必要です。

 

【癒着の治療法】

残念ながら癒着を治す薬はありません。

唯一癒着を物理的に剥がす手術(癒着剥離術)はありますが、手術になりますので体へのダメージが強いのと、この手術にても癒着が起きてしまう事もあります。

 

【癒着の対処法】

癒着が起きても症状がなければ経過観察で大丈夫ですが、

先ほども書きましたが腸閉塞が起こり易くなるので便通には注意が必要です。

便秘、腹痛などがひどくなるなどの症状が出てくる場合は内服を開始します。

その場合は消化器内科にて内服薬の調整を行っていきます。

一番よくつかわれるのが

大建中湯

という漢方薬です。

これは手術後の癒着に対して効果的とのデータも多く示されておりかなり有効です。

基本的に便が詰まらない様、常に動かす必要がありますので内服はずっと継続する必要があります

 

これでダメなら、薬を追加していきます。

 

僕の使用例としましては、 

●腸管を動かす薬として

ガスモチン、ナウゼリン、プリンぺラン、センノシド、ラキソベロン等

 

●便を柔らかくする薬として

酸化マグネシウム、アミティーザ、最近ではリンゼス、グーフィス、モビコール等

 

●腸管ガスを減量する薬として

ガスコン

 

これらを組み合わせて使用していきます。

個人によって内服の効き方も違うので正解の処方は1つには決まりません。

もし昔に手術や大きな炎症を罹患され、現在便秘、腹痛などの症状で悩まれておられる方いらっしゃいましたら一度消化器内科を受診してみて下さい。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました!