消化器内科医のひまつぶし

医療関係を中心に?日々起こった事、思った事書いていこうかと思います。

【雑記】血を吐いた!その時現場は。(中編)

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皆様お疲れ様です。

前回の続きのやり取りを書いていきたいと思います。

前編はこちら。

 

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アルコール依存症の方が吐血したと救急要請あり。

精神科での管理が必要な患者さんでありお断りをしたのですが・・・

 

その2分後再び僕の電話が鳴り…

 

???「先生!なんでこの患者さん取れないんや?」

 

僕「えっと…〇〇先生(外科部長)ですか!?いや、、入院しないといけないのでアルコール依存の方はかなりリスク高いと思います。」

 

外科部長「出血止めるだけ止めてどっか送られへんのか?(転院するということです)」

 

僕「いや、さすがにカメラだけして放り出すみたいな形になるのでどこも受けてくれないと思います。」

 

外科部長「うちは消化器力入れていかなあかん(この分野の患者さんを集めたいということです)から取ってくれ、なんかあったら手伝うから。」

 

僕(いやいや、手伝うって言われても。入院患者さん絶対診に来ませんやん…でももはや決定事項なんやろうしやるしかないか。)

 

僕「…わかりました。そしたら受けます。」

外科部長「おお、頼んだぞ。あと5分くらいで来るらしいから。」

僕「(もう受け入れてるやん(怒))了解しました!」

 

ネガティブな気持ちを振り払い、すぐに処置の体制を整えるべく内視鏡担当の看護師さんに連絡を入れる。

 

僕「アルコール依存症の吐血の人が来るから用意しといて!データわからんけど、点滴、採血、CT検査まわってすぐに内視鏡処置するわ!」

 

看護師さん「わかりました!処置は何の準備しますか?」

 

ここで大体2択に分かれます。

一つは「食道静脈瘤」と言われる病気で、

アルコールなどで肝臓が悪くなると段々硬くなっていき、肝硬変と言われる状態になります。すると、硬くなった肝臓内を血液が通りにくくなってしまいます。そのため別ルートを探して血液は心臓に帰っていくことになるのですが、その通り道が食道という胃の手前のご飯が通る臓器です。そこの血液が急激に増えることで血管が破れて大出血を起こす病気なのですが、この病気止血ができなければ即、命を落とします。

 

もう一つは「マロリーワイス症候群」と言われる病気で、

これはお酒を飲んだりして思いっきり吐いたときに、胃の粘膜が裂けてしまう病気です。大出血起こしますがこれは意外にもすぐに自然止血することが多いです。

ですが、程度がひどいとクリップで裂けた部分を閉じたり、出血している部分を焼いたりしないといけません。またこれは物理的な問題ですので誰にでも起こります

皆さんも思いっきり吐いたときに血が出たらこの病気の可能性高いと思われます。

大体放っておいても大丈夫なことが多いですが、たまに重症化するとこれまた命に関わりますのでそうなった時は救急車でもいいのですぐに病院行ったほうがいいです。

 

僕 (やはり一番危険な食道静脈瘤は押さえておかないとな。でも吐いた後に血が出たっぽい言い方してたし、きっとマロリーなんだろうな。)

 

ちなみにマロリーワイス症候群のことは大体みんなマロリーと略します。

また動詞として、「うわ!うちの患者さんマロった!」なんて使い方することもあります(笑)

 

僕「一応食道静脈瘤に備えて用意しといて!血液検査取ったらすぐに輸血の発注かけれるようにもしといてね!まぁ大丈夫やとは思うけど。」

 

看「わかりました!準備しておきます!」

 

そんな指示を出したのも束の間、サイレンの音が近づいてくる。

 

看「先生!患者さんが到着しました!」

 

僕「わかりました!!」

 

すぐにER(救急対応する部屋です)に駆けていくのであった…

 

 

一気に書こうと思ったら予想以上に長くなってしまいました。

次でまとめようと思います(笑)。

 

最後まで読んでいただき有難うございました!